サイドカー

ホンダ・クラブマン/サイドカー

たいがいの乗り物は左右対称に出来ている。
普通の三輪車も左右対称である。
非対称の乗り物の代表はサイドカーだろう。なんとも面白い乗り物だ。
(第2次大戦中のドイツのブローム・ウント・フォスという会社は各種の非対称飛行機を作ったが、それは例外中の例外)
実用にならない乗り物の代表は空はグライダー。
動力がないのだから目的地が強い風上にある場合はとんびのように空に浮かんでいるだけで、対地速度はほとんどなく、目的地に行き着くのに苦労するはずである。(飛行機に曳航された軍用グライダーはノルマンディー上陸作戦で活躍したが・・)
水上ではヨット。
これも向かい風ではなんども間切って(ジグザグに)進まなければ行けない。ともに操縦を楽しむ道具だ。そして、陸上ではサイドカーか・・・・

サイドカーというと、ハーレーをイメージするが、BMWも有名で、ドイツの電撃作戦当時、機甲部隊のBMWサイドカーが兵士三人乗りで、その機動力を生かして戦場を走り回っている画像はよく見る。
現在はどちらも値段も飛び切り高い (BMWはまったく別の会社が少数を作っているようである)。 だからサイドカーも趣味の乗り物で、特にあの巨大なハーレーサイドカーはパレード専用のようなもので、非実用の乗り物の代表だと思っている。
あの大きなサイドカーで雨の渋滞の首都高速で、ほかの車から、憐れみの視線を受けながら、びしょぬれになってじっとしているなんて姿はどう考えても利口のやることのようには見えないことだろう。

日本にはサイドカーとしてメーカーがつくっているものはなく、サイドカー専門業者の手による改造車だ。
だが、なんといってもオートバイとは全く違う「横方向へのひっぱり荷重」のかかる乗り物だから、無理な操縦でオートバイとサイドカーがはずれてしまったら大変なことになるので、たとえ車検の不要の250ccにつける場合も、改造申請で相当なチェックがはいるらしい。
小生の小型のホンダ・クラブマン(250cc)につけたものは車検がいらず、幅も小さく(不安定だが)、取り扱いも簡単で、こまわりが効き、荷物もたくさん積め、操縦を楽しめると同時に結構実用品として使える。
渋滞時の首都高でも、渋滞を苦にしないのはオートバイだが、サイドカーでもこのサイズのものなら通常の車と車の間もすり抜けることができる。

かつて運転免許に「側車付自動二輪車免許」というのがあったが、当然のことと思う。オートバイに車を一つつけたことで、全く違う乗り物になってしまったのだ。
車輪がひとつ増えて倒れなくなったのだから、安全な乗り物のような感じがするが、その倒れないことこそがオートバイと全く違う点で、難しさと面白さを感ずるところだ。

自転車もオートバイもカーブを回る時、なにげなく車体を傾けて回っている。ヒコーキは旋回する時は必ず機体を傾けてまわる。そうしないと、横滑りしてしまい、目的の方向を向かない。
オートバイのハンドルを切ってまわすのは、手押しの時だけで、運転はほとんど無意識で、カーブで考えたり、ハンドルを意識して切って回ることはない。子どもの頃、ためしに自転車でハンドルだけで回ってみようと試したことがあったが、見事にひっくり返ったことがある。
オートバイのグループでハンドルを切ってまわるのはサイドカーだけで、さらにシンメトリーになっていない道具の特徴として、右と左の回り方が違うという特異体質があることだ。

図のように左にサイドカーがついている場合(右ハンドル車)、左に回ろうとしてハンドルを切ると、遠心力でサイドカーが浮き上がってしまう。(アクセルを戻せばすぐに戻る)

慣れてくると意識的にサイドカーを浮き上がらせて、走ることもできるが、小生はまだむり。

逆にオートバイ側に回ろうとハンドルをむりに切ると、オートバイ側が浮き上がってしまう。
これは動力を伝達する後車輪を浮き上がらせてしまい、駆動力を失って、頭からつんのめるという危険な状態をひきおこす事があるらしい(まだこうした体験はないが・・・)

だから高速でカーブを切る時にはいささかでも遠心力に逆らうための体重移動が必要で、危険な右カーブ(オートバイ側)では大げさにオートバイ側に体重移動する。(左カーブの場合はその逆)
特に車幅の小さな、不安定なホンダ250/サイドカーでは、ちょっとした方向変更にも、腰を浮かしてこまめに身体を動かすが、これが大型とは違う面白さなのかもしれない。ブレーキは前ブレーキだけで、後輪ブレーキはほとんど使わない

だからサイドカーレースはパッセンジャーとの絶妙のコンビが必要なのは当然で、サイドカーに乗るパッセンジャーはオートバイ側のカーブではドライバーの背中に乗るように、サイドカー側のカーブでは470級ヨットをトラピーズで操るクルーのように、サイドカーから思い切って身を乗り出してバランスをとる。失敗すると、自動車ともオートバイとも違う転倒の仕方をするのがレースのニュース画像にでてくる。

はじめて乗ったときは、オートバイの感覚でカーブを曲がろうと思っても、車体が傾かず(あたりまえのことだが・・・)、土手に激突しそうになってサイドカーに乗ってくれた友人は飛び降りて歩いて帰った。またかつて市議会議長だったひげの長老議員は、戦時中、中国でよくサイドカーに乗っていたというので、家まで送ったことがある。乗っている間は固まったように口をきかなかったが、到着した時、大きなため息をついた。怖かったらしい。
しかしその後だいぶ上達して、女房や娘を乗せて結構長距離ツーリングもした。
ご希望の方はどうぞ。面白い乗り物ですよ。
このオートバイの項を書いているうちに、またぞろ虫がわいてきました。啓蟄を過ぎる頃から、また動き出すかもしれません。そのときのために整備に出しました。(1月15日)
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