| 『日本国憲法の問題点』 | ||
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| ま え が き | ||
日本国憲法の問題点といえば、憲法違反が公然となされていて、これに誰も気付かず、論じられてもいないことである。 「憲法違反」などと言うと、多くの人々はすぐ第九条のことだと思ってしまう。ここにすでに「問題点」が浮かび上がってくる。 というのも、そもそも憲法の本質から考えると第九条は、ほんの付け足りにすぎない。その「付け足り」を巡って五十有余年、不毛の論議を繰り返すとは? では、現在行なわれている最も深刻な「日本国憲法違反」とは何か。 それは第一に、憲法第十三条の違反である。 国民の生命、自由、財産を保障する第十三条こそ、日本国憲法の生命(最重要条項)である。 だが、今の日本では第十三条が踏みにじられても誰も気にする人がいない。日本では自国民が他国によって拉致されても政府も代議士も指をくわえたままで何もしない。 地価が暴落し、ゼロ金利が続いた結果、国民の資産が吹き飛んでも、それを「日本国憲法違反」だと指摘する声はいっこうに上がらない。 さらに重大なのは憲法第九十八条二項の違反である。 この憲法違反に至っては、そのことに気が付いている人さえいない。 日本国政府は国際条約に違反し、憲法に違反しているだけでなく、有事における日本国民の安全の権利をないがしろにしている。 これほど由々しいことがあろうか。 これほどの致命的な違反が現に行なわれながら、なぜ誰も問題にしないかといえば、結局のところ、現憲法が日本国民自らの戦いの中から生まれたものではなく、敗戦の結果、アメリカから押しつけられたものであるからに他ならない。 ゆえに日本国民は本気になって憲法と取り組むことがなかった。 本書の目的は、日本国民がかかる機運を起こすための起爆剤となることにある。 さらに付け加えれば、憲法とは元来、慣習法である。 いかに優れた規定があろうと、それが作動するための基盤がなければ、その憲法は結局 「絵に描いた餅」 に終わる。 本書では、その基盤として「教育」および「官僚」の問題を採り上げた。 日本の憲法を考える上で、この二者の研究は何にも増して重要だと信じるからである。 なお、日本国憲法の基盤を解明するためには歴史、特にアメリカ史、イギリス史、ドイツ史などの研究が不可欠であるが、紙幅の関係上、本書では触れることができなかった。これらのテーマについては、本書の姉妹篇である『痛快!憲法学』が入門書として参考になろう。併せてお読みいただければ幸甚である。 |
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平成十四年四月 |
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| 小室直樹 |
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| 『日本国憲法の問題点』 もくじ | ||
| まえがき | ||
| 第1章 失われた日本国憲法の精神 | 13 | |
| 本章の登場人物 丸山真男 ジェファソン ジョン・ロック ケインズ |
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| 英国病と日本病 滅亡の淵に立つ日本 今の日本では、民主主義も資本主義も機能していない! 憲法の精神は踏みにじられ、泥にまみれている! 憲法で最も重要な条文はどれか デモクラシーは過程であって、完成された状態を言うのではない 丸山真男 そもそも憲法とは生命、自由、財産の保護という、国民の基本的人権を守る ことを最大の使命とする 第十三条こそ、憲法の急所 デモクラシーのエッセンスは「アメリカ独立宣言」にあり トマス・ジェファソン 全ての人間は平等に作られている! そして、すべての人間は生命、自由、幸福追求の権利を持っている! その権利は何人たりとも奪われることがあってはならない! なんと憲法第十三条には「お手本」があった 自然状態という「模型」 ジョン・ロック 政治・経済思想の「コペルニクス的転換」 「私有財産の発見」で民主主義も資本主義も確立した ジョン・ロック なぜ、ジェファソンは「幸福追求の権利」と書いたのか 憲法とは、国家権力への命令である 地価下落を放置するのは、憲法違反 「流動性の昆」にはまった日本経済 ケインズ 利子とは何なのか 「利子ゼロ」だったから、ソ連経済は破綻した 経済のイロハも知らない日本の金融当局 資本主義のエネルギーは、まさに利子によって生み出されている。 利子なきところには、消費も投資も起こらない バブル潰しの犯人は誰だ? 私有財産への干渉は、紛れもない民主主義の否定である 日本国憲法への挑戦である 憲法違反をした官僚をなぜ裁かないのか 暴政には暴力を 拉致疑惑の放置は紛れもない「憲法違反」 国家第一の責務は「国民の保護」にあり 憲法を活かす「土壌」とは 憲法とは生き物である |
15 17 19 22 24 25 27 29 30 32 34 36 38 39 41 43 46 49 52 53 55 |
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| 第2章 総理大臣なき国家・日本 | 59 | |
| 本章の登場人物 フランクリン 井上準之助 伊藤博文 ビスマルク |
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| 「主権」とは何か どんな無理難題であろうと、官僚は大臣の言うことを聞くべし 抗命は反逆に等しい 大臣への反抗は「反逆罪」に等しい 憲法に明示してあるとおり(65条)、国家主権の一部である行政権は 内閣のものであって、官僚のものではない アメリカ独立戦争を引き起こした国王の「暴言」 フランクリン 戦前では大臣命令は絶対だった 表だけの超高額紙幣 井上準之助の戦い 井上準之助 憲法九条が外務省を堕落させた 今の外務省にはイギリスのような「外交のプロ」というプライドは 影も形もなくなった なぜ、小泉首相は外相更迭を躊躇したか そもそも明治憲法には、内閣総理大臣という単語そのものが一つも なかった 明治憲法に総理大臣なし! 大日本帝国憲法第五十五条 伊藤博文 明治憲法を″殺した″軍部大臣現役武官制 かくて「大正デモクラシー」は生まれた 「不磨の大典」の息の根を止めた現役制 宇垣内閣を潰した「三長官会議」 現役制なかりせば、昭和史は違った 元勲によって支えられていた「首相の椅子」 「龍騎兵の靴は、常人の足には大きすぎた」 ビスマルク 行政権は誰のものか? 驚くべきことに、いまだに日本国の総理大臣は憲法の中に、その権限の 根拠を持っていないのである!(日本国憲法第65条 66条) 行政権の行使は、内閣の連帯責任である! 大臣の首がなかなか切れない理由は憲法にあった 日本国憲法第6条 7条 なぜ、福田官房長官は「辞表」にこだわったのか 憲法の欠陥を″実証″した田中前外相 こうすればクーデターは起こせる! 国際法の主体は主権国家である したがって、国際法の主体は主権国家であり、国家意思を決定する中央 政府の存在を前提にしている 江戸時代も、天皇は「元首」だった 日本の憲法は「首相の不在」を許している 戦前も戦後も変わらない「総理大臣の重み」 かたや戦後の日本には、総理大臣はいるのか いるようでもあり、いないようでもある 官僚たちの抵抗を抑える最後の切り札は「政治家の覚悟」である |
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| 第3章 「戦後教育」こそ、民主主義の敵 | 117 | |
| 本章の登場人物 ルソー シーザー ワシントン トルーマン |
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| 完全に崩壊した日本の教育 「戦後教育は民主的」という大嘘 戦後日本で行われてきた教育は民主主義教育でも何でもない 途方もないまがい物教育であった ルソーの絶望 ルソー 教育なきところに、デモクラシーは生まれない ワシントンを国王に推戴したアメリカ人 ワシントン 独裁者は、大衆の歓呼に包まれて登場する シーザー 教育こそ民主主義の防波堤である イギリス議会政治を支えたヨーマンたち 入植後六年でハーバード大学を作った植民者たち 教育大国アメリカの誕生 「国民の育成」こそアメリカ式教育のエッセンス アメリカ式教育とは何か その最大の目的は、「国民の育成」にある 教育とは「社会化」である 近代教育の大きな柱の一つは、「社会化」(socialization)にある 「アメリカの栄光」を強調する歴史教育 現在の体制は、先人たちの血と汗によって築かれたものであることを教え、 「アメリカ民主主義は命を賭けても守るべきものだ」ということを児童・生徒 の脳髄に焼き付けるのである 英雄伝が英雄を作る 「歴史教育と歴史研究は違う」 若者の心は、栄光に満ちた物語や英雄伝によってのみ鼓舞される 国民不在の「教育基本法」 戦後教育くらい、非アメリカ的で、非民主主義的な教育はない! 教育基本法前文(部分) なぜアメリカは日本の教育を「堕落」させたのか 明治政府に立ちふさがった「巨大な壁」 明治の新政府にとって、最大の課題は不平等条約の改正だった 日本には「国民」がいなかった! ナポレオンの強さは「国民軍」にあった 戦争の強さは、民族国家の度合いを測る有力な尺度である 日露戦争の勝敗を分けたものとは 「資本主義の精神」を教えた戦前日本の教育 二宮金次郎は、日本的資本主義の象徴だった 教育勅語は儒教思想にあらず 本来の儒教において、「臣民」という言葉が使われることは決してない 「君子と聖人」の区別を説いた孔子 「一視同仁」とは何か 教育勅語の目的はけっして反動的なものでもないし、封建的なものでもない それとは正反対に、「近代国家」の国民を作るためのものであった 憲法よりも重視された「教育勅語」 かくのごとく戦前の教育においては、教育勅語のほうが図抜けて重要であった 教育勅語こそ、日本的「アメリカ式教育」の根本教典であったというわけである アメリカも戦慄した日本兵の強さ トルーマン 「敗戦国の逆襲」を防ぐ最良の方法とは 「ポツダム宣言」の読み方 日本人を精神的奴隷にしようとしたアメリカ 日本の教育から徹底して民族教育の要素を除去する 非アメリカ的な教育をすることによって、日本がふたたび強国になる道を塞ごう というのである 教育滅びて、民主主義も資本主義も朽ち果てた 民主主義教育、民族教育が行われていないから、政治家も官僚もますます 堕落した 「自主憲法制定」だけでは何も変わらない 憲法を活かすためには、まず現在の教育を考え直すところから始めなけ れば、今の日本は決して再生することはないのである |
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| 第4章 憲法を殺す官僚の大罪 | 173 | |
| 本章の登場人物 ジャクソン 文帝 森有礼 文天祥 |
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| 「官僚独裁」の国日本 まさに、官僚こそが憲法殺しの直接の下手人 無能な独裁者たち その筆頭が他ならぬ外務省である アメリカ民主主義を前進させた西部人 ジャクソン 「スポイルズ・システム」とは何か(猟官制度) 「どんな平凡な人間だろうと、役人は務まる」 アメリカは「貴族政治の国」だった 官僚制抜きに政治を語るなかれ 文帝 「無階級社会」を作り出した明治維新 準貴族以下がいなければ、貴族制度は機能しない ノブレス・オブリージュとは 「社会には階層が必要である」という理由 社会にはエリートが必要である 維新を起こし、維新に滅びた下級武士たち 「教育をもって階層構成原理となす」 エリート養成学校として作られた帝国大学 森有礼 帝国大学の学生に限り、試験を免除する! 日本と欧米の大学は正反対 ヨーロッパで大学が誕生したとき、それらはすべて「私立」であった 権力と関わりのある大学など、一つもなかった オックスフォードが「エリート校」と呼ばれる理由 戦前に受験戦争はなかった 戦前の東京には、いくつの高校があっただろうか 八ヶ岳型だった戦前の高等教育 戦前の日本は「学歴オンリー」ではなかった 戦後に「受験地獄」が生まれたわけ かくて学歴は身分になった 科挙に驚嘆したヨーロッパ人 文天祥 試験を以って、官僚を採用する この科挙の制こそ、まさに中国の誇る一大発明である なぜ、科挙の堕落は急激に起きたのか 受験教科書を作った皇帝 受験秀才の誕生 かくも中国の官僚は腐敗した あまりにも似ている古代中国と現代日本の官僚制 「高級官僚は宦官にも劣る」 「ライバル」なき日本の官僚たち |
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| 第5章 日本人が知らない「戦争と平和」の常識 | 227 | |
| 本章の登場人物 マッカーサー モルトケ チャーチル グロチウス |
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| 憲法と国際法の共通点 憲法と国際法 この二つは本質的に共通の部分を持つ なぜ国際法では「立法者の意志」が優先されるのか 憲法第九条に秘められたアメリカの意図 マッカーサー 二転、三転、四転する「戦争の意味」 「事情変更の原則」とは 事情変更によって、憲法の条文が事実上、空文になるということがある 何しろ、憲法とは慣習法なのだから、それは当然のことだ 明治憲法はデモクラシー憲法だった 「天皇の戦争責任論」は、なぜ無意味か したがって、イギリスが近代に入って数々行った戦争について、時の国王・ 女王に政治責任がないのと同じく、昭和天皇に開戦の責任などあろうはず もない 昭和天皇の悲劇 今や憲法第九条は空文となった つまり、憲法9条を巡る「事情」は完全に変更された よって事情変更の原則によって、憲法9条は空文化、死文化したと見るべき であろう 自衛隊は「第十三条の軍隊」になるべし だが、そこで自衛隊を「憲法第十三条の軍隊」、すなわち「国民の基本的人権 を守るための軍隊」とすれば、どうなるのか 統帥権とシビリアン・コントロール 鉄血宰相の苦心 「統帥権の独立」の見本を作ったビスマルク=モルトケのコンビ モルトケ 統帥権の独立とは何か 要するに政治と軍隊の分業体制、政治家と軍人の役割分担のことである 日露戦争戦争まで統帥権は健全だった 統帥権の意味をねじ曲げた昭和の軍部 シビリアン・コントロールは「魔法の杖」か シビリアン・コントロールでは作戦用兵の成功も失敗も、すべて軍の最高 指揮権者である首相あるいは大統領が負う 海軍大臣チャーチルの大失敗 チャーチル 戦後の日本に「シビリアン・コントロール」なし 警察と軍隊の大きな違いとは 「戦争の法」から国際法は生まれた グロチウス 「もはや戦時国際法研究は不要」と言った東大教授 踏みにじられた憲法第九十八条 「公知条項」は何のためのものか 捕虜となることは「特権」を与えられることなのだ 合法的戦闘員になるための四条件とは スイスに見る戦時国際法教育 なぜ憲法第九十八条違反が「最悪の憲法違反」なのか 戦時国際法のイロハさえ教えられていない日本国民は、まるで虎狼の中に 放り出された子ネコのようなもの いつ食い殺されても不思議はない |
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| ●巻末付録 281 | ||
| 日本国憲法/大日本帝国憲法/教育基本法/教育勅語/アメリカ独立宣言 | ||
| 写真提供 オリオンプレス/毎日新聞社/共同通信社(順不同) | ||
| 表紙カバー・イラスト 江口寿史 装丁 林泰(銀河系) |
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