家相の科学
清家 清著
1969年12月15日初版 光文社 KAPPA HOMES
ま え が き

この本は、昔から言い伝えられた家相の言葉を手がかりに、住みよい家の条件は何かということを建築学的に考える本です。

私は、かねてから、家相というものに深い関心を持っていました。
ここには、昔の人が家をどう考えていたのか、どんな家に住んでいたのかを知る手がかりがたくさんかくされているからです。そこで、折りにふれては古本屋をのぞいて家相の本をさがし、また図書館をあさりました。
その結果、一般向けに書かれた昔の家相の本は、少なくとも数十種あることがわかりました。その大部分が江戸中期から末期にかけて出版されたものです。
家相は古代中国で生まれたものが日本の宮廷建築に伝わり、やがて民間にも広まりました。
日本建築の進歩とともに、家相も日本の風土習慣の影響を受けて変化し、桃山から江戸時代にかけて、ほぼ完成したものと思われます。
その結果が、一般向け家相書のラッシュになったのでしょう。

これらの家相の本を徹底的に調べた結果、私は、家相を単なる迷信としてかたづけることはできない、家相の中には、現代の建築学から見ても十分に通用する真理を含んでいると確信するようになったのです。

家相の本に書かれている事柄は、だいたい三つの傾向にまとめることができます。
一つは、建築計画学的、工学的あるいは住居学的に根拠のあるものです。
ここには、まだ建築の技術が十分発達せず、材料の種類も乏しかったころに、家を住みよくするために考えられた古人の知恵がかくされています。
いわば、現代の建築基準法と設計、建築技術書を合わせたようなものです。

二番めは、家に関した社会的なタブーをあらわしたものです。
妊娠中の女性がいる家では工事をしてはいけないというのは、妊婦の労働が過重にならないようにという配慮を、家相のタブーとして表現したものです。
また、身分制度のきびしい社会の中で、分をこえたことをしてはいけないという封建制や儒教的な考えにもとづくものも、ここにはいるでしょう。

三番めは、科学的にまったく説明しようがないもの
これは序章でくわしくお話しする陰陽五行説によるものから、あるいは、囲いの中に木があるのは「」という字になるからいけないという駄じゃれまで含まれています。

今までは、この三番めだけに注目して、家相は迷信である、ナンセンスとかたづけられてきました。
しかし、よく調べてみると、はじめの建築学的、住居学的に根拠を持つものがけっして少なくないのです。いや、現代の建築の盲点をつき、あるいは、技術や経済性にだけ走って、ともすれば、そこに住む人間のことを忘れがちな現代の建築に、反省を促すものすら含んでいます。

そこで、私は、たくさんの家相の本の中から、一番めの建築学から見て根拠のあるものをおもに選び、それに二番めの社会的タブーを示したものも加えて、現代の住まいとの関連を考えてみたいと思いたち、まとまったのがこの本です。

この本は、科学時代の家相秘伝と思ってくださってもよいでしょう。
これから家を建てる人は、どのような点に注意して敷地を選び.設計、工事を頼めばよいかを知る手がかりを得られます。家を買う人、借りる人は、住みよい家を見つけるポイソトがどこかを知ることができます。
また、現在住んでいる家をもっと住みよくしたいと考えている人も、たくさんのヒントを見つけることができるように工夫したつもりです。おおいにご利用いただければ幸いです。

なお、この本に出てくる家相の言葉は、原文のままでは読みにくいものが多いので、適当に送りがなをつけ、読みくだし文にあらためました。
日  次
まえがき

序 章 家相とは何か

第一章 環  境
山の尾根が終わった崖の下、あるいは谷の出口に住むのは・・・
道の突きあたりに家を作るのは・・・
家の西に大きな道路があるのは・・・
門の前に大きな木があるのは・・・
敷地の北西に大樹があるのは・・・
まわりより高い建物は・・・
子どもの家を、親の敷地内に建てるのは・・・
妊婦がいるときに普請をするのは・・・

第二章 敷  地
敷地で前が低く、後ろが高いのは・・・
北東、南西に凹凸がない敷地は・・・
南に空地のある敷地は・・・
三角形の敷地は・・・
狭い敷地に大きな家を建てるのは・・・
湿気のある敷地は、盛り土をすれば・・・
庭に大きくなる木を植えるのは・・・
中庭に木を植えたり、池を作るのは・・・
庭に石をたくさん敷くのは・・・
川の流れを敷地の中にとり入れるのは・・・
高すぎる塀は・・・
塀が家に近いのは・・・


第三章 間取り
家が大きく、住む人が少ないのは・・・
小さい家にたくさんの人が住むのは・・・
家は、南向きが・・・
間口の広さより奥行が深い家は・・・
横に細長い家は・・・
北東、南西に凹凸のない家は・・・
三部星、四部屋の家は・・・
部屋の配置は、居間を中心にするのは・・・
四畳半の部屋が多い家は・・・
家の中央に使わない部屋があるのは・・・
主人の部屋は、家の中心に置くのは・・・
玄関は、門口と一直線にならないのは・・・
商店の店が、北東、南西にあるのは・・・
裏側に入口のない家は・・・
南向きの家は、西を座敷にするのは・・・
寝室を、門口と一直線の位置に作るのは・・・
寝室が台所の近くにあるのは・・・
寝室に、タンスや衣装箱を置くのは・・・
台所が、東向きにあるのは・・・
台所が南西にあるのは・・・
台所の火が外から見えるのは・・・
床の間を、西と北の間に作るのは・・・
老人室が、南東に作るのは・・・
茶室を南西に作るのは・・・
浴室を、北東、南西に作るのは・・・
家の中央に便所を作るのは・・・
北向きの便所は・・・
便所と門口が向きあうのは・・・
母屋の西に離れ座敷を作るのは・・・
階段を家の中央に作るのは・・・
窓が東向きは・・・
北向きの窓は・・・
西向きの家で南に窓をあけるのは・・・
客商売の家の神棚を、外から見えるところに作るのは・・・
部屋数の少ない家では、神棚を押入れの中に作るのは・・・

第四章 建築
通路の上に、二階座敷を張り出すのは・・・
大黒柱を接ぎ木するのは・・・
柱に四方から戸があたるのは・・・
大黒柱の正面が外から見える家は・・・
棟木が通っていない家は・・・
柱を棟木より重視するのが・・・
床が高い家は・・・
床が段ちがいになった家は・・・
正面から見て凸字形の家は・・・
屋根の前後が低く、中央が高い家は・・・
しまりのない土質の敷地は・・・
古井戸をむやみに埋めるのは・・・
樹木の茂っていた土地に家を建てるとき、根を残さないのは・・・
建物を、内から外へ向かって作るのは・・・
家を部分改造するのは・・・
二階を増築するのは・・・
二軒の家を合わせて一軒にするのは・・・
すきま風のはいる家は・・・

第五章 材 料
飾りの多い家は・・・
材木をさかさまに使うのは・・・
陽木を使った家は・・・
厚い畳は・・・
畳と畳の問にすきまがあるのは・・・
畳の長さが六尺三寸なのは・・・
屋根瓦がゆがんでいる家は・・・
門柱がまがっているのは・・・

第六章 設  備
門が大きく、家が小さいのは・・・
敷地の南西に排水するのは・・・
敷地の中に下水がたまるのは・・・
敷地の南西にごみ捨て場を作るのは・・・
味のよい水は・・・
井戸とかまどが並んでいるのは・・・
調理用の火口が、三個、五個あるのは・・・
南西に天窓をあけるのは・・・
大きすぎる天窓は・・・
寝具は乾煉したのが・・・
こたつを、家のまん中に作るのは・・・
物干し場を、家の棟越しに作るのは・・・
風呂桶を壁に寄せて置くのは・・・
南に軒や庇があるのは・・・
車庫の前は広くとるのは・・・
倉庫の屋根の棟木を南北にするのは・・・
物置の上に住まいを作るのは・・・
吉相の家に、吉相の人が住むのが大吉